アイスショーレポートNo.61 ~notte stellata 2024 in 宮城 10日(3日目)
3月10日(日) 3日目 現地、そして配信より
羽生選手の至高の美しさが際立つnotte stellataの公演もとうとう最終日。
メンバーさんたちからお寄せいただいた楽公演、リハーサル、配信、それぞれの感想と、会場ブースの様子をレポートします。
『カルミナブラーナ』
今日はスタンド席でした。昨日、9日のアリーナ席では見えなかったものが見えてすごくよかったです。特に、運命の女神に少年が翻弄されるシーン。
運命の女神が操る糸が見えました。その糸に少年が後ろへ引っ張られて必死に抗おうとする。大地真央さんと羽生選手の動きがピッタリ合っていて、本当に糸で操られているようでした。スタンド席だからこそ見えた糸だったと思います。本当にすごくて…感動で体の震えが止まりませんでした。
会場でいただいたブレスレットライト、一斉に点灯するとすごくキレイでした。フィナーレの『希望のうた』の時に、ブレスレットをつけた手を音楽に合わせ会場中の人が左右に振って、客席が煌めいていたのが印象的でした。
羽生選手をはじめ出演してくださったスケーターのみなさま、関係者のみなさま、たくさんの希望をありがとうございました。
このショーのおかげで、いろんなことを知ったり思い出したりしてくれる人がたくさんいらっしゃることがとても嬉しいなと思います。そんな機会をつくってくださることに感謝でいっぱいです。
『Danny Boy』
真っ白な衣装の羽生選手が氷上に現れた瞬間、大歓声が響きます。優雅で静かな曲調、ピアノの音だけが穏やかに流れる中、会場中の呼吸が1つになって波動しているような不思議な空間でした。
なんの予備動作もなくふわりと跳び、しなやかに降り立ち、そのまま流れるようなランディングで次の動作に移っていく・・・一切むだな動きがなくて、緩急自在、強弱、硬軟、メリハリの効いた美しいスケートを完全にストーリーに溶け込ませて、客席を酔わせてくれました。
初めて観たDanny Boyは、これまでに観たどのプログラムともまったく違う味わいでした。本当に彼はどれだけの引き出しを持っているのでしょう。いや、引き出しには素材がたくさん入っていて、それを組み合わせていったら無限の可能性が広がっていくのでしょうね。
プロになってからいっそう忙しいはずなのに、どんどん違うジャンルに挑戦して新しいプログラムを生み出し、しかもそれがものすごいクオリティで、すべてにおいて「別格」という言葉がぴったりです。
興奮冷めやらぬ中、仙台で1泊。同行者と語り尽くしました。そしていつもと同じく「本当に私、見たよね?」ってなる、記憶喪失症候群の朝を迎えたのでした。
MC
羽生選手は演技中とはまた違った愛らしい語りで、会場を涌かせていました。千秋楽の高揚で盛り上がる中、ふと「明日は暗い日になります」と言ったとき、客席から笑い声がもれてざわつきました。「そこは笑うところじゃないでしょう」という彼の言葉にほんとにそうだよ、と思った私でした。明日は3月11日・・・。
あれからいろいろ考えて、会場のお客さんはつい笑っちゃったけど、もしかしたらその人ごとにいろんな感情や背景があるのかなーって思いました。
11日が震災のあった日だって初めて知った人や忘れてた人は、「ふふふ、そんな大袈裟な…」って思ったかもしれないし、辛い経験をした人は「そうだよね」って感じの悲しさを含んだ笑いだったかもしれないし、私みたいに「笑うなよ…」って思った人ももちろんいて、感じ方も思いもきっと人それぞれでしょう・・・。
でもこうして震災のことを知ってくれたり思い出してくれたりしたならそれでいいかな、それこそこのショーの意味だよね、と思えてきました。
結論・・・そんな風にちゃんと向き合って話をしてくれる羽生さんが大好き!! ショー全体が素晴らしかったし、昨年は辛さとか苦しさとか悲しさとかをすごく感じたけど(特に11日の公演)、今年は希望とか慈しみとか強さとか…そんなことを強く感じることができました。
リハーサル
リハーサル公開の発表は遅めでしたが、早くから予約していた飛行機がたまたま朝いちばんの便だったので本当にラッキーでした。地元の空港でも早朝からGIFTのボアやRE-PRAYのパーカーを見かけて嬉しくなりました。仙台空港からちゃんと会場までたどり着けるかしらと心配で心配で…。11時40分の開場に遅れては大変!と、観光やランチは潔く諦めて、小雨降る仙台から一路、利府へ!
客席は、お客さんを入れてないアリーナとショートサイド以外、ほぼ満席でビックリしました。MCの方が「熱い視線をお送りください!」と盛り上げてくださる中、ついに“黒い子”が登場!!ちゃんとプーさんも一緒です。
最初にリンクを1周しながら、リンクサイドや客席の上のほうにいるスタッフの方々にも礼儀正しくご挨拶。
見慣れているアップのストロークとはひと味違う動きもありました。ゆっくりと前進しながらアラベスク、足を替えてアラベスク、今度はバックしながらアラベスク、また足を替えてアラベスク。フィギュアスケートを習っている人から、スローの動きほど難しいと聞いたことがあります。練習なのにどの瞬間も見惚れるほど美しく眼福でした。
カルミナプラーナではイナバウアーから何度も何度も同じ軌道を描いてアクセルを跳びに行って、会場から拍手は起きるけどご本人は納得してない感じです。氷の軌跡を確認したり、終了間際には跳ばずに氷上でくるくると回って何かを確認したりしてました。
現役時代の試合の公式練習で、ものすごい集中力で最後の調整をしていたときの真剣なまなざしを思い出し、今も少しも変わらない姿に胸が熱くなりました。
リハーサルが終わってみれば、ノッテステラータ、カルミナ、ダニーボーイ3曲とも練習着で観ることができて、なんて贅沢な時間だったのでしょう。こんな英断をしてくださったゆづにも、関係者の皆さまにも本当に感謝です。
さて、迎えた本番のカルミナブラーナは圧巻の熱演! あの軌道から入って跳んだアクセルは見事で、極上かつ史上最高のジャンプでした。リハーサルで祈るように見ていた人も、その日本番で初めて見た人も皆同じく、ブワーッと感動と驚嘆が爆発したような拍手がわき起こりました。
それから・・・とても親切にしていただいた会場スタッフの方と少しお話をしたのですが、昨年のnotte stellata2023でも会場内でお仕事をされていたそうです。本番を観る機会があって「羽生君めちゃくちゃカッコいいですね!」と言われてこちらまで嬉しくなりました。大学生とおっしゃったのでふと「震災のときは・・・」とお尋ねしたら「小学校1年生でした」と言われました。それ以上は何も聞けませんでしたが、こうして地元の方たちが支えてくださっているショーなんだなと感謝の思いを新たにした出来事でした。
HuLu配信
今年は現地には行けないけれど、HuLuは少しお高い配信料で、迷う気持ちがありました。でも8日楽公演の配信は公演後のインタビューも見られることと8日のディレイ配信があって、その後楽公演の見逃し配信もあると知り、これは契約しなければ!と決意しました。昨日、BSやCSの放送のお知らせがありましたが、やはりライブで見るのとはぜんぜん違います。本当にありがたいです。
カルミナブラーナは圧巻でした。大地真央様のオーラに負けないゆづの演技、素晴らしかったです。ゆづはもう別次元過ぎて改めてすごさを実感しました。
ダニーボーイは切なくて儚くて胸がギュッとなりました。全身全霊の演技に引き込まれました。
他のスケーターさん、転倒やパンクが多くて、疲れが出たのかな、心配になりました。それでもジェイソンの演技は感動したし、シェイは元気もらえたし、刑事くんは表現力アップしてるし、それぞれによかったです。とても温かい気持ちになったショーでした。
【会場物販・飲食ブース】
今年もブースは大盛況でした。リハーサルから本番までの待ち時間に寒風の中、ホットカイロをいっぱい貼り付けてド根性で1時間並び、せり鍋にありつきました。昨年、山形のゆづ友さんに「せりは根っこも食べるんだよ」と教えていただいたので、ハフハフしながらお汁まで美味しくいただきました。
去年は早くに売り切れてしまったのを教訓としたのか、お店の方が「せり鍋は余るほどたくさんあるよ!」と行列に向かって叫んでらしたのがおかしかったです。でも三角揚げは残念ながら今年も売り切れ。ホタテは売ってるのを知らなくて食べそこなっちゃったし、来年こそは!(notte stellata2025も開催されますよね?^^)
>>>その他のショー・試合レポもぜひご覧ください。アイスショーレポートは2015年のFaOI幕張から書き続けています。